ACジャパンのCM「聞こえてきた声」に対する批評

TLDR:「偏見」と「傾向に対する認識」は非なる


https://youtu.be/aHeObn54ICw?si=6eF4h5eU0kLoO-2V


リンクを踏むのが面倒臭い方に向けてCMをざっくりと紹介する:

「(家の中で赤ちゃんの泣き声を聞いて)はいはい、今行きますよ~」

「(デートでバーにいる時に)お会計はカードで」

「(小学校の授業中に)将来の夢はパイロットになることです!」

(もう一つあった気がするけど忘れてしまった)

上記のセリフを読んで、男性を思い浮かべただろうか。女性を思い浮かべただろうか。


一番上のセリフは女性、次の二つは男性の声で再生されたはず。

そうである場合、視聴者は性差や男女の役割に対して固定的な思い込みと偏見を持っている、とACは主張している。


性差や男女の役割に対する偏見は世の中に多いと思うし、喚起を行うことはとても素晴らしいことだ。

しかし、このCMはそういったものに対する換気になっていないと考える。なぜなら、このCMは偏見や思い込みを指摘していからだ。


「将来の夢はパイロットになることです」と聞いて男の子を思い浮かべることは性差別だとは思えない。なんとなく男の子の方がパイロットになりたいと思うだろうという印象から導き出した推察であり、女の子がパイロットになりたいとの意思を持ってはいけないと思っているわけではない。詳しいデータは手元にないが、実際のデータと照合すれば女の子よりも男の子の方がパイロットになりたがる傾向があるように思う。


パイロットの例えを使用して、性差や男女の役割に対する偏見となるシナリオを考えよう。

女の子がパイロットになりたい意思を表明した場合、「パイロットになるのは女の子らしくない」、「CAになる方が女性らしい」と意見をする者は男女の役割に対して固定的な思い込みを持っていると言える。


同じように、有給休暇を取って家で子供の面倒を見ている男性に対して男らしくないなどの批判を浴びせることや、デートのお会計で女性払わせるなと主張することも性の役割の限定である。


社会問題への提言をするのには賛成であるが、今回取り上げているACのCMは罪のない者を批判しているようにしか受け止められない。そうなってしまうのは本末転倒だと思う。